投稿日: 2025年8月28日

脱炭素経営を進めるうえで、避けて通れないのがScope1対策です。Scope1とは、自社が直接排出する温室効果ガスを指します。
その代表例が「社用車の燃料使用」によるCO₂排出です。
営業や配送など日常的に車両を利用する企業にとって、社用車からのGHG排出は大きな要因のひとつです。
一方で、燃料使用量や走行距離などデータが取得しやすいため、脱炭素施策におけるファーストステップとして最適な分野でもあります。
1. 社用車におけるScope1対策の代表的な方法とは?
社用車から排出されるGHGの削減方法には複数のアプローチがあります。
本記事では以下の3つを取り上げ、それぞれの特徴を比較します。
- EV(電気自動車)導入:車両自体をゼロエミッション化
- テレマティクス:走行データを活用した効率化と削減
- カーボンニュートラル給油カード:排出量を可視化し、同時にオフセット
それぞれの方法は目的や導入コストが異なるため、自社の状況に合わせた検討が必要です。
2. EV(電気自動車)の導入効果と課題
EVとは、「Electrified Vehicle」の略で、一般に「電気自動車」のことです。その際にイメージされているのは、BEV(Battery Electric Vehicle=バッテリー式電気自動車)の場合が多いでしょう。
しかし厳密にいうと、BEVだけでなく、それ以外のHV(Hybrid Vehicle=ハイブリッド自動車)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle=プラグインハイブリッド自動車)、FCV(Fuel Cell Vehicle=燃料電池自動車)もEVに含まれます。
本コラムではゼロエミッション車といわれるBEVとFCVについて取り上げ、Scope1対策としての効果と、導入にむけた課題を解説します。

出展:【図解】「EV(電気自動車)」とは?|HV・PHV・FCVとの仕組みの違いを解説 – EV DAYS | 東京電力エナジーパートナー
BEV(バッテリー式電気自動車)
BEVは走行時にCO₂を排出せず、Scope1削減に直結する手段です。
充電する電力の調達方法によってはScope2での間接排出が増える可能性がありますが、再生可能エネルギー由来の電力を調達することで解決可能です。
EUは2035年、英国では2030年にHVを含めたガソリン自動車の販売を禁止するなど、海外でも注目されています。
BEVはScope1対策として非常に有効ですが、一般的にBEVはHVやPHVに比べて車両価格が高額になる傾向があります。
さらに、充電インフラの整備も必要です。EVの充電には、急速充電器を用いても30分はかかるため、車両運用によっては、充電場所や充電時間の確保が必要です。
現時点では、EVの導入は「将来的な脱炭素戦略」として段階的に進める企業が多いです。
蓄電池の改良による航続距離の長期化などの技術革新や、法制度の変更によって、BEVの普及スピードはますます加速していくでしょう。
企業における導入効果を最大化するためには、自社の車両運用や充電環境を事前に確認することが重要です。
FCV(燃料電池自動車)
FCVは、水素(H2)と酸素(O2)を化学反応させて直接電気を発生させるしくみで走行します。
走行時に水しか排出せずゼロエミッションを実現しますが、化石燃料をベースに水素を作り出す場合にはCO2が発生してしまいます。
再生可能エネルギーなどを使って、製造工程においてもCO2を排出せずにつくられた水素である、「グリーン水素」が普及すれば、本当の意味でゼロエミッションを達成できるといえるでしょう。
FCVはEVのように重い蓄電池を搭載する必要がなく燃料タンクを大きくできるため、EVよりも航続距離が長いことが特徴です。
一方で、充填できる水素ステーションの数はまだ限られており、導入範囲が大きいのが現状です。
FCVは商業車に向いているとして、長距離トラックなどではBEVと並行してFCVの開発を進めている自動車メーカーも少なくありませんが、車両コストも高く、普及はBEVよりも遅れています。
FCVは将来的にBEVと並んでScope1対策の効果が大きい選択肢として位置づけられるでしょう。
導入検討の際は、車両台数・運行ルート・インフラ整備状況を総合的に判断する必要があります。
参考URL:EVとは?HVやFCVとの違いや特徴、普及に向けた政府の取り組みを解説:朝日新聞SDGs ACTION!
3. テレマティクスによる運行最適化
テレマティクスは、車両の走行データを収集し、燃費改善や運行効率化を実現する手段です。
ドライバーの運転傾向を把握し、急発進やアイドリングを抑えるだけで燃費を改善し、燃料使用量とCO₂排出量を削減できます。
即効性があり、比較的導入しやすい点が魅力です。
安全運転スコアと燃費の相関性に基づき、「安全運転による CO2排出量の削減効果」を可視化するサービスを提供する事業者もあります。
ただし、削減効果は運転者の行動改善に依存するため、教育や定期的なモニタリングが必要です。
また、一定の削減効果は見込まれますが、CO₂の排出を完全に削減することはできないため、Scope1対策としては完全ではありません。
社用車の運用全体を効率化することで、社内の理解や意識も高まり、持続的な削減につなげられます。
参考URL:テレマティクス自動車保険で「CO2排出量の削減効果」を可視化する新サービスを開始
4. カーボンニュートラル給油カード──即効性のある可視化とオフセット
カーボンニュートラル給油カードは、法人企業向け給油カードサービスに、カーボンクレジットによるオフセットを付与したサービスです。既存の車両や充電などのオペレーションはそのまま、Scope1排出量を管理することができます。
給油データをもとにCO₂排出量を算定し、同量のカーボンクレジットを購入することでCO₂排出量をオフセットします。
一方で、BEVやFCVのように実際にCO₂を削減できる仕組みではありません。
カーボンクレジットによるオフセットは、カーボンニュートラル実現に不可欠な仕組みであることは、誰もが認識しています。
しかし、「他者の削減成果をお金で買う仕組み」という誤解も根強くあります。
排出削減は排出量の多い先進国や大手企業が中心に行い、そのコストも負担すべきとされていますが、途上国や中小企業にも削減のポテンシャルは多くあり、2050年カーボンニュートラル達成という目標を達成するためには、無視できない存在です。
しかし、途上国や中小企業は資金や意識の面で制約が多く、自主的な取り組みを進めにくい現状があります。
そこで重要となるのが「資金循環」です。
先進国から途上国へ、大企業から中小企業へと資金を流し、削減活動に見合った利益を還元する仕組みがなければ、活動は持続できません。カーボンクレジットは、大企業の目標達成手段であると同時に、途上国や中小企業の削減活動を支える間接投資の役割も担っています。
カーボンクレジットは「世界全体で排出削減に取り組むための資金循環ツール」であり、2050年カーボンニュートラル達成に不可欠な手段なのです。COP26でも、目標達成に向けた手段として、カーボンクレジットの活用や市場メカニズムの重要性が議論されています。
カーボンニュートラル給油カードは、すでに伊藤忠エネクスの給油カードを利用している場合、最短1か月で導入可能です。
短期でScope1対策の成果を出すための取り組みとして、多くの企業で導入が進んでいます。
カーボンクレジットについて、以下記事で詳しく解説しています。よろしければご覧ください。
参考URL:【総研ブログ】カーボンクレジットによるオフセットは、なぜ非難されるのか?
5. 4つの対策を比較|導入判断のポイント
ここまで、EV・FCV・テレマティクス・カーボンニュートラル給油カードを比較してきました。それぞれの特徴を簡単に比較します。
| 対策 | 導入しやすさ | 即効性 | 長期効果 | 主な課題 |
|---|---|---|---|---|
| 給油カード | ◎ | ◎ | ○ | 実削減ではなくカーボンオフセット |
| EV | △ | ○ | ◎ | 高コスト・充電インフラ整備必要 |
| FCV | △ | ○ | ◎ | 高コスト・水素供給制約 |
| テレマティクス | ○ | ○ | ○ | 運転改善に依存、CO₂排出は残る |
社用車のScope1対策は、脱炭素経営を進める第一歩です。
どのように対策していくかは車両運用の方法に応じて検討する必要がありますが、多くの企業では、「テレマティクスで運行効率化 → 給油カードで即効的に可視化・削減 → EVやFCVで将来的に排出ゼロ」 と段階的に組み合わせています。
この段階的な取り組みで、社内の理解や意識も高まり、持続的な削減が可能になります。
伊藤忠エネクスでは、導入事例ページでカーボンニュートラル給油カードの活用例を公開中です。
「どの手段から始めるべきか」「自社に最適な対策は何か」など、導入前の情報収集に、ぜひご活用ください。
[導入事例はこちら]
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