SBTi最新草案:「Corporate Net-Zero Standard V2」のポイントと今後の展望

投稿日: 2025年3月29日

2023年3月18日、SBTi(Science Based Targets initiative)は、「Corporate Net-Zero Standard V2」の草案を公開しました。

外部リンク:「SBTi」公式ホームページ

この新たな草案は、企業が温室効果ガス削減目標を達成するための新しい基準を提示しています。

この記事では、特に改定された主要な変更点に焦点を当て、これらが企業に与える影響を解説します。

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1.「Corporate Net-Zero Standard V2」草案の概要

SBTiの「Corporate Net-Zero Standard V2」草案は、企業がネットゼロを達成するための具体的な指針を示すものです。

これまでの基準に加え、企業の温室効果ガス削減目標の設定方法や、その進捗をどのように追跡・報告するかに関する基準が強化されました。

新草案は、企業が温室効果ガス削減に向けて科学的根拠に基づいた実行可能な目標を設定し、その達成に向けた透明性のある戦略を策定するための枠組みを提供します。

2. 改定された主要な変更点

SBTiの新草案では、企業が設定する温室効果ガス削減目標に関して、複数の重要な変更が加えられました。

以下の領域ごとの改定された変更点について、詳しく見ていきましょう。

1)Scope 1: 直接排出削減目標

  • Scope 1とScope 2の目標設定が分離されました
  • これにより、企業はそれぞれの範囲ごとに異なる削減目標を設定することが求められます。従来のように一括で目標を設定するのではなく、Scope 1(直接排出)とScope 2(間接的な電力消費による排出)の目標が別々に設定されることになります。
  • 過去実績を考慮した絶対量削減方式が導入されました。企業は自社の過去の排出実績を踏まえ、実現可能な削減目標を設定することが求められます。
  • IPCC(AR6)IEA(NZEシナリオ)と整合する削減経路の採用が義務付けられました。企業はこれらの国際的な気候シナリオに基づき、温室効果ガス削減の道筋を設定し、進捗を管理する必要があります。

2)Scope 2: 間接排出削減目標

  • ロケーションベース市場ベースの2つの目標設定が必須化されました。企業は電力の使用において、ロケーションベース(実際の供給電力網による排出)と市場ベース(選択した電力購入方法による排出)の両方を考慮し開示する必要があります。
  • ゼロ排出電力の市場直接調達が推奨されています。企業は、再生可能エネルギーを直接調達することを優先し、ゼロカーボン電力を積極的に利用することが求められます。
  • RECs等Scope 2削減策の新ガイドラインが導入されました。再生可能エネルギー証書(RECs)などを利用したScope 2の削減策について、従来よりも明確なガイドラインが設定されています。

3)Scope 3: その他の排出削減

  • 企業実態に応じた境界設定が求められます。これにより、企業は自社の実態に基づき、Scope 3の削減目標を設定することができます。従来のように固定的な削減割合を求められることはなく、最重要な排出源を優先するアプローチが推奨されます。
  • 調達比率指標も評価の対象となります。企業の排出削減を評価する際、単なる削減量だけでなく、調達の割合やサプライチェーン全体の影響も考慮することが求められます。
  • 追跡が難しい排出に対して活動プールを評価するアプローチが採用されました。企業が完全に追跡できない排出については、柔軟に対応できる仕組みが提供されています。また、間接的な緩和策(削減以外のアクション)も限定的に許可されるようになっています。

4)炭素除去(カーボンリムーバル)

  • ネットゼロに向けた炭素除去の役割が明確化されました。ネットゼロ目標の達成には、排出削減に加え、炭素除去が重要な役割を果たします。残余排出(削減できない排出)の相殺手段として炭素除去が活用されることが明確になりました。
  • 最低耐久要件の設定により、炭素除去プロジェクトの品質が担保されます。炭素除去のプロジェクトはその耐久性が求められ、企業は信頼性の高いプロジェクトを選定する必要があります。
  • ネットゼロ目標年前でも炭素除去の活用が可能となりました。企業は、目標達成前でも排出削減と並行して炭素除去を活用することが認められるようになり、柔軟な対応が可能となります。
  • 中間目標の導入が検討されています。炭素除去を進める過程で、企業がどの段階でどの程度の成果を上げているかを評価するための中間目標が設定される可能性があります。

5)BVCM(バリューチェーン外の気候対策)

  • 企業の排出削減に加え、バリューチェーン外の気候対策が評価対象として含まれることが検討されています。企業の排出削減活動に加え、バリューチェーン外での気候対策(例:高品質なカーボンクレジットの購入、森林保全投資など)も評価対象として取り入れる方向性が示されています。
  • 高品質なカーボンクレジットの購入や森林保全投資など、企業が自社の排出削減に加えて行う気候対策が評価され、これが企業の認定取得に影響を与える可能性があります。

3. 自社にとっての影響と対応策

これらの改定された基準は、企業にとって重要な影響を与えます。企業は、特に以下の点に注意を払い、対応する必要があります。

1)Scopeごとの目標設定

企業は、Scope 1(直接排出)とScope 2(間接的な電力使用)に対して、異なる目標を設定する必要があります。過去実績を反映した削減計画を立て、科学的根拠に基づく目標を設定することが重要です。

2)ゼロカーボン電力の調達

Scope 2の削減に関しては、ゼロカーボン電力の直接調達を優先することが求められます。自社の電力契約を見直し、再生可能エネルギーの調達を増加させることが求められるでしょう。

3)サプライチェーン全体の影響評価

Scope 3では、自社の実態に基づいた目標設定と、サプライチェーン全体における影響評価が求められます。

最も重要な排出源に優先的に対応し、柔軟な戦略を取ることが必要です。

4)炭素除去の活用

目標達成に向けて、炭素除去の活用が柔軟に認められるようになりました。

企業は、残余排出に対して炭素除去策を適切に活用し、その質を確保するための最小要件を遵守する必要があります。

4. まとめ: SBTi草案が意味することと今後の展望

SBTiの「Corporate Net-Zero Standard V2」草案は、企業が科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定し、実行可能な戦略を策定するための強力な指針を提供しています。

改定された基準では、Scopeごとの目標設定や炭素除去の活用が明確化され、企業は今後、これらの基準に基づいてさらに具体的で実行可能な削減計画を立てることが求められます。


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