脱炭素は大企業だけじゃない!中堅企業が今押さえるべきGX-ETS&開示基準&ビジネス要請

投稿日: 2025年9月17日

多くの企業にとって、サステナビリティ対策は「いずれは必要になるもの」と捉えられがちです。
しかし、特にScope 1――自社車両やボイラーといった燃料由来の直接排出は、思っている以上に制度や取引先からの要請に直結しやすい領域です。

本稿では、GX-ETS(排出量取引制度)やSSBJ/IFRS S2といった制度面の変化、さらに取引環境の実例を踏まえながら、なぜ「今から少しずつ準備を始めておくと安心なのか」を解説します

 1. GX-ETS:2026年度からの本格化と対象拡大の見通し

GX-ETSは2023〜2025年度を「試行フェーズ」として運用してきましたが、2026年度からは本格的な排出量取引制度としてスタートします。
現時点では、Scope 1排出量が直近3年平均で10万トンを超える大規模企業が対象ですが、将来的に対象拡大が検討されていることも公表されています。

また、直接の対象にならなくても、GX-ETSの適用企業と取引を行う場合はScope 3の観点から排出削減の協力を求められるケースも想定されます。
「自社は対象外だから関係ない」と考えていると、取引や評価の面で不意を突かれる可能性があるわけです。

2. 開示制度:Scope 1・2の“絶対量”報告が常識に

開示の潮流も待ってはくれません。
国際的には、ISSBが策定したIFRS S1・S2を基盤に、各国でサステナ開示の整備が進んでいます。日本でもSSBJが国内基準を整備中で、Scope 1・2・3が明記対象です。

  • 2025年度(2026年提出の有報):任意適用可能
  • 2027年3月期:時価総額3兆円以上のプライム上場企業から義務化
  • 以降、段階的に対象拡大

特にScope 1・2は“絶対総量”での開示が求められます。単に「報告する」だけでなく、投資家や監査法人に対して“削減に向けた具体的なアクション”を説明できるかが注目されるでしょう。

「まだ任意だから大丈夫」ではなく、「先行して取り組む企業のほうが評価を得やすい」流れが生まれています。

参考:SSBJとは?サステナビリティ基準委員会の概要や最新動向を解説 | 株式会社ゼロック

3. 【事例紹介】サプライチェーンからの要請:制度とビジネス要件の接点

制度だけでなく、取引先からの要請もScope 1対応を加速させています。大手メーカーや商社、物流企業はすでに、取引先に対してScope 1排出削減や開示を契約条件に組み込み始めています。
以下、国内大手の取り組み事例をご紹介します。

トヨタ自動車:調達先へ積極的な削減対話

  • トヨタは「CDPサプライチェーンプログラム」に参加し、調達額の約86%の一次サプライヤーに回答を要請。91%がCO₂原単位(売上高当たり)を前年より低減させる取り組みを実施しています。
  • また、「グリーン調達ガイドライン」において、製造工程・ライフサイクル全体でのGHG排出削減をサプライヤーに依頼し、物流における燃料使用や燃費等のデータ提出も月次で義務付けています。

出展:トヨタ自動車株式会社 Sustainability Data Book
   TOYOTAグリーン調達ガイドライン

豊田合成:サプライヤー140社と脱炭素活動推進

  • 豊田合成は、自社のCO₂排出量の7割を占めるScope 3削減を目的に、主要サプライヤー140社と連携。「省エネ事例集の共有」や「省エネ道場」「ロードマップ策定支援」など、実務支援を通じた削減推進を行っています。

出展:サプライヤーとの関わり|豊田合成

富士通グループ:サプライチェーン上流へのリアルな働きかけ

  • CDPの「サプライヤーエンゲージメント評価」で最高ランクを獲得。
  • 主要取引先に対し、GHG排出量や気候戦略の報告、Scope 3排出削減の取り組みを要請。簡易算定ツール提供など、実務支援も併せて行っています。
  • また、約12社のサプライヤーと製品単位のCO₂排出量(PCF)をプラットフォームで共有し、可視化と具体的施策立案に寄与しています。

出展:サプライヤー12社と製品のCO2排出量データをプラットフォーム上に可視化

TDK:継続的なエンゲージメント評価でサプライヤーへの圧力を強化

  • CDPのサプライヤー・エンゲージメント評価で、5年連続「リーダー」選定
  • 「グリーン調達基準書」「環境活動調査」「訪問診断」などの仕組みを整え、調達先に対してサステナ活動の“見える化”と協働を進めています。

出展:TDK、CDP2024 「サプライヤーエンゲージメント・リーダー」(最高評価)に5年連続で選定 | TDK

こうした動きは特別な話ではなく、むしろ「普通になりつつある」傾向です。
ジェトロの調査でも、海外進出日系企業が脱炭素対応に取り組む大きな理由の一つに「取引先からの要請」が挙げられています。

4. 今やる意味:制度カレンダーを逆算すると

2025年度:Scope 1対応の実績づくりを始めるタイミング
2026年度:GX-ETS義務化スタート(対象は大企業中心だが波及の可能性あり)
2027年度:開示義務化が大手から段階的に開始

つまり「まだ大丈夫」と見える今のうちに、小さな一歩を踏み出しておくことで、将来の負担や不意の要請に備えることができます。

まとめ:制度対応を“先行投資”に変える

  • GX-ETSは大企業から始まるものの、波及は避けられない流れ
  • 開示制度ではScope 1・2の報告が「当たり前」に
  • サプライチェーンからの要請も、Scope 1対応を避けられないテーマに

こうした状況のなかで、今からできる取り組みを進めておけば、単なる「対応」ではなく「取引先や投資家からの評価」というプラスの価値につながります。

例えば、伊藤忠エネクスの「カーボンニュートラル給油カード」は、車両の燃料使用に伴うCO₂排出量をクレジットで相殺できる仕組みです。
日々の給油を変えずに削減実績を“見える化”できるので、初めの一歩として取り組みやすい選択肢です。

「まだ大丈夫」と考えるより、「今から少し始めておくと安心」。
それが、将来の制度対応や取引関係で大きな差につながるかもしれません。


Webサイトより詳しく解説しています。

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